恋人の絆―1

 滝本が入院した。盲腸が破裂して腹膜炎を起こしたのだ。
一歩間違えば死ぬところだったと聞いて、俺は心底、ゾッとした。

 課長の許可を得て入院先の病院へ駆けつけた俺は、滝本の
入っている特別室へと急いでいた。一階の案内所で教えられた通り、
エレベーターを降りて右手へ歩く。角を曲がってすぐに、俺は
ゴリラのような大男に立ち塞がれた。

「お通しできません。どうぞ、お引き取り下さい」
 ゴリラは仏頂面で言った。

「はあ?」
 訳がわからず、俺は間の抜けた声を出してしまった。

「あの……滝本真路(たきもと・まさみち)さんのお見舞いに
来たんですが?」

「白藤哲也(しらふじ・てつや)さんですね。あなたを真路様に会わ
せないようにと真理恵(まりえ)様からきつく言いつかっております
ので、お通しできません」

 ようやく合点がいって、俺は唇を噛み締めた。
真理恵というのは滝本の姉さんで、俺たちの関係には大反対している。

 仕方なく俺は、課のみんなから預かってきた見舞金の袋と
花束を男に差し出した。

「これは会社の仲間からです。せめてこれぐらい渡して
もらえませんか?」
 上目使いにゴリラを伺うと、ゴリラは困惑していた。

「持って帰ったりしたら、会社でなんて言われるか……」

 たまらなく惨めで自然と俯いてしまう。ゴリラは暫く迷っていたが、
会社から誰も見舞いに来ないのも不自然と判断したのか、見舞金と
花束を受け取ってくれた。


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恋人の絆―2

 その夜、俺はブランデーをヤケ飲みしながら、自分の立場を考えた。

 滝本と俺は、付き合ってかれこれ一年になる同性の恋人同士だ。
もちろん二人の関係は周囲には秘密にしているが、滝本は唯一の
肉親である姉の真理恵さんに俺のことを告白してしまった。

 弟を溺愛する真理恵さんは、興信所を使って俺のことをいろいろ
調べたらしい。その結果、俺のどうしようもない過去を知って、
俺達が付き合うことに大反対した。

しかし、俺の身体にのぼせている滝本は、真理恵さんの反対に
耳を貸そうとはしない。

 真理恵さんとしては、滝本の入院を機に俺達の距離を広げさせ
ようという考えなのだろう。
滝本に、いざという時、頼りになるのはやっぱり身内だと、恋人
なんて所詮は他人だと教えるために、俺を病室から遠ざけたのだ。

 恋人の俺には、例え滝本が危篤状態になっても、あいつの枕元に
行って手を握る権利はない。
真理恵さんは肉親の権力で、俺をたやすく病室から追放することがで
きるというのに――。

 俺は、たまらなく惨めな気分になって、グラスに残っていた
ブランデーを一気に煽った。



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恋人の絆―3

 金曜日、二日酔いでむかつく胃をなだめすかして一日の仕事を
終えると、俺はセックス・フレンドの井上に電話した。

素面のまま自宅に戻って酒で無理矢理眠るより、誰かと一戦交えて、
疲れ果てて眠る方が遙かにいいと考えたからだ。

滝本だって、俺が一ヶ月も男なしでいられる身体じゃないことぐらい、
よーくわかってるはずだ。

 シャワーを浴びている井上を待つ間、ビールでも飲んで暇を
潰そうと冷蔵庫を開けた。すると、ちょうどその時、ソファーに
脱ぎ捨ててあった俺の背広で携帯が鳴った。

なぜかドキン!と胸が高鳴った。滝本からかもしれない。

俺は恋を知ったばかりのうぶなガキのように胸をときめかせて、
ポケットの携帯を探った。
しかし携帯を掴んだ途端、コール音は鳴り止んでしまった。

まるで迷子になった子供のような心細さを覚えて、俺は茫然と
携帯を見つめた。

 その時、シャワーを終えた井上が腰にタオルを一枚巻き付けた
だけの格好で現れた。

「何で泣いてるんだ?」
井上が不思議そうに言った。

 井上に指摘されて、俺は初めて自分が泣いていることに気づいた。

「一年ぶりに電話してきたと思ったら、また失恋か?」
 井上は俺を気遣うように優しく笑いかけてきた。

「煩いなぁ、泣いてなんかねーよ! さっさとやることやろうぜ」
 俺はわざと乱暴な口調で言うと、井上のタオルを剥ぎ取った。

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恋人の絆―4

「ちょっと待てよ」

 井上が慌ててベッドサイドの恋人の写真立てを伏せる。
ちっ、律儀な奴。

 井上は恋人にベタ惚れだけど、そいつは身体が弱いため、
セックスは年に数えるほどしかできない。
それで持て余した性欲を、こうして俺みたいな好きモノと
遊んで晴らすというわけだ。

俺だったら、そんな恋人とはさっさと別れるんだけどな。

 俺が自分でバスローブを脱ぎ落としてベッドに横たわると、
井上は俺の脇腹の傷跡を人差し指でなぞった。

「だいぶ目立たなくなったな」

 そう言った井上は医者の目をしていた。そう、この傷は
こいつが縫ったんだ。

「あんたのお陰で命拾いしたけど、相変わらずロクな人生じゃないよ」

「大丈夫、君はまだ頑張れる」

 俺より二つも年下と思えない悠然とした表情で、井上は笑った。
人生の酸いも甘いも噛み分けたって感じのするその笑顔に俺は
見惚れてしまった。

 ゆっくりと唇が合わさる。俺の苛立ちを宥めるような優しい
ものから、次第に貪るような激しいものへと変わっていく。
井上の内に秘めた荒々しさが剥き出しになる。

 愛はない。あるのは肉欲だけだ。だけど全身全霊で俺にぶつかって
くる井上のセックスが好きだ。井上の猛ったモノを受け入れる今、
この瞬間だけは、こいつが俺のものだと確信できるから――。



 あまりの激しさに意識を飛ばしてしまったらしい。

相変わらず手加減の欠片もない激しいセックス。井上は普段、恋人に
対して我慢している分、遊び相手には本当に遠慮のない奴だ。

 井上のセックスは炭酸のきついペリエのようだと思う。
俺は、ほんのり甘いミルクティーのような滝本のセックスが恋しくなった。

 ベッドに井上の姿はなかった。ドアの隙間からリビングの明かりが
漏れている。ぼそぼそと聞こえるのは、井上の声だ。おそらく最愛の
恋人に電話しているのだろう。

 井上はセックスを中断してでも、必ず夜10時に幼なじみの恋人に
電話する。
『おやすみ』を言うためだ。
中学一年の時から続いている習慣なのだというから恐れ入る。

 電話を終えた井上がこちらに来る気配に、俺は急いでシーツに
潜り込んでドアに背を向けた。
ベッドが小さく揺れて、井上が端に座ったのがわかった。



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恋人の絆―5

「同棲して、かれこれ3年だろう? よくもまぁ、飽きずに
ベタベタしてられるな」
 シーツの中から俺が呆れたように言うと、井上は苦笑した。

「俺、今夜はここに泊まれるから、哲也も泊まっていけよ」
「ふぅん、お許しが出たのか?」
「ああ、ここんとこ体調がいいから機嫌もいいんだ」

 俺は写真でしか見たことのない井上の恋人の顔をチラリと
思い浮かべた。可憐と言う言葉がピッタリの華やかな顔立ち。
井上と同い年のはずなのに、どう見ても10代にしか見えない
幼さがあった。

 とても井上を尻にひくようには見えないタイプだが、当の
井上はひれ伏さんばかりに崇め奉っている。なにもそこまで
相手の顔色を窺わなくてもと、俺は何度からかったことか。

「ここで俺達がこんなことしてると知ったら、どんな顔するかな?」
 俺は笑いながら井上の下半身にそろそろと手を伸ばした。

「哲也、ルールを守れないなら二度と会わないぞ!」

 恫喝するような井上の低い声に、俺は地雷を踏んだことに
気づいた。慌てて取り繕うために、おどけた口調で言う。

「ゴメン、冗談だよ。バレるようなヘマはしない。ほら、キス
マークどころか爪痕ひとつ付けてないだろ?」

 井上の脇腹を触れるか触れないかという微妙なタッチで撫で上げて
やる。肝心な場所には決して触れないもどかしい愛撫に、井上の
モノはたちまち芯を持ち始めた。

 不機嫌にひき結ばれた唇を割って舌を潜り込ませると、乱暴に
舌を絡め取られる。井上は、そのまま俺をベッドに縫い止め、腰を
擦りつけてきた。

 俺がやりやすいように膝を開いてやると、井上は俺の後ろの窄まりに
指を入れて掻き回し始めた。弱いところを爪先で引っ掻くように
刺激され、馴染んだ快感に我知らず嬌声が漏れる。

「立てなくなるまでヤッてやるよ」

 耳元で甘く囁かれ、俺はゾクリと肌を震わせた。

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