スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

誰も泣かない―1

 すでに午前二時を回るというのに、男の攻めは一向に終わる
気配はない。煌々と明かりの灯る室内で、文弥(ふみや)は
両脚をM字型に大きく開かれたまま恥ずかしい場所を容赦なく
男の目に晒されていた。

「俺のモノをうまそうに飲み込んでるな」
 男が嬉しそうに結合部を指先で辿る。文弥は羞恥のあまり
両手で顔を覆った。今、自分がどんな状態なのか考えただけ
でも死にそうなのに、男は大層、ご満悦だ。

「顔を見せろ」
 男の手が強引に文弥の手を外す。羞恥に頬を染める文弥の
初々しさに、男のイチモツがさらに硬さを増した。

「お願い…です……後から…して下さい」
 文弥は、自分の顔を見られずに交われる背後位が好きだった。
なにより、男の醜い姿を見なくて済む。

 男は、文弥より35歳も年上で、頭髪もかなり薄かった。身長など
文弥より5センチも低い上に、腹の周りにはでっぷりと肉が付い
ている。お世辞にもハンサムとは言い難い容姿だ。

「そうだな、おまえの綺麗な牡丹の花を愛でながらイクのも悪くない」
 男は好色そうな笑いを浮かべると、小柄な身体からは想像も
つかない怪力で文弥の細い身体をひっくり返した。

雪のように白い背中に、大輪の紅い牡丹が乱れ咲いている。男が
懇意にしている彫物師の力作だ。その花に丹念に舌を這わせると、
男は乱暴に文弥の中へと打ち込み始めた。肉と肉のぶつかる
乾いた音が室内に響く。

「ちゃんと腰を使え! 俺の動きに合わせるんだ!」
 苛ついた口調で叱責され、ピシャリと尻を叩かれる。
「はい……旦那様」

 文弥はもう、男の欲望を受け入れる痛みに泣き叫ぶ子供ではない。
男が突き上げる時は息を吐いて身体から力を抜き、男が最奥に
達した瞬間、下腹に力を入れて締め付ける。

「どうだ、文弥……感じるかっ?」
「はい……気持ち…いいです」

 延々と苛まれて、もはや焼かれるような痛みしか感じないが、
文弥は感じているフリをする。男を悦ばせ満足させないことには
終わりは来ないと知っているからだ。

 何を思ったのか激しい抽送を繰り返していた男が、ふと動きを
止めた。ゆっくりと全体重をかけて文弥の上にのしかかってくる。
深々と串刺しにされたまま、文弥は男に押しつぶされて息ができ
なくなった。

 窒息しそうになり、必死に藻掻いてなんとか顔と右肩だけ男の
下から這い出した。何が起こったのか理解できないまま文弥が
男を見ると、男は両目をカッと見開らき、酸素を求めるように大きく
口を開いて……絶命していた。

 恐怖に駆られた文弥の口をついて出たのは、隣室に控えている
男の部下の名前だった。
「……せ、瀬川さんっ、瀬川さん、助けて!!」

 それは、文弥が恋い焦がれるあまり、普段は決して口にすること
のできない名だった。

   目次   次へ

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ランキングに参加してますので、ポチしてもらえると励みになります(*^_^*)
 
スポンサーサイト

テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

誰も泣かない―2

 遠くから鹿威(ししおど)しの鳴る音が聞こえる。二百坪もある
見事な日本庭園はちょうどツツジの真っ盛りだった。

 文弥がここに来るのは今回で二度目だ。一度目は、男の妻・
綾子に顔見せをするために来た。そして今日は、男の息子・藤井
隆治(たかはる)に呼ばれて来た。

 この屋敷は男の本宅……つまり藤井組組長・藤井泰治(やすはる)
の屋敷だった。

 藤井組は広域暴力団の末端組織の一つだが、東北では一、二を
争う規模の組織だ。泰治はその三代目の組長で、ワンマンだが
度胸の据わった男として知られ、その醜い容姿ゆえか美しいものが
大好きだった。

 銀座の売れっ子ホステスだった女・綾子を口説き落として妻にした
のは有名な話だ。その男が、息子より若い、それも男の愛人のベッド
で腹上死したのはとんでもないスキャンダルだった。

むろん、関係者には箝口令(かんこうれい)が敷かれたが、スキャン
ダルはどこからともなく漏れるもので、四十九日の法要では出席者達
に陰で面白おかしく語られていた。

 文弥は、男の葬儀に出席することも許されず、マンションに監禁状態
だった。それが急に今日になって呼び出され、瀬川に伴われて本宅に
連れてこられた。

 十二畳ほどの座敷で、初めて対面した男の息子・隆治は、今年
二十五歳。面立ちこそ父親に似ていなかったが、ふてぶてしさは
そっくりだった。

「やっと会えたな」
 そう言って席についた隆治は、値踏みするように父親の愛人を見た。

 明らかに白人の血が混じっているとわかる白い肌と色素の薄い髪。
骨細で華奢な身体はとても二十歳になるとは思えない。亡き父が何よりも
愛でたのは、西洋人形のように繊細な顔立ちだったという。

「長い間、父に仕えてくれてご苦労だった」
 僅かな沈黙の後、隆治は静かに労いを口にした。文弥は何と応えて
よいのかわからず途方に暮れて目を伏せた。

「今回のことでは、母が酷く落ち込んでしまってね。君にはこの街を出て
もらいたい。それなりの金も用意した」
「……わかりました」

 文弥には街を出ても、行く当てなどない。唯一の肉親である母親は、
十五歳の文弥を売って、ヒモ男と蒸発したのだ。以来、ずっと藤井泰治の
庇護を受けて生きてきた。

 しかし、文弥は嫌だとは言えなかった。愛人として最悪の形で、男の妻
を傷つけたのだ。どれほど詰(なじ)られようと文句は言えない立場だった。

前へ   目次   次へ

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ランキングに参加してますので、ポチしてもらえると励みになります(*^_^*)
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

誰も泣かない―3

 文弥は、組長が通って来ていた名取市繁華街のマンションから、
大学近くの仙台市青葉区にあるワンルームマンションに転居した。
すべては瀬川の手配により、速やかに行われた。

「少し交通の便は悪いが、日当たりはいい部屋だ」
 荷物が定位置に納められ、業者が帰った後、ぐるりと室内を見回し
た瀬川は、そう言って文弥を振り返った。四十代に入って渋味を
増した美貌は、弁護士という職業に相応しく知的でクールだ。

「家賃や光熱費は通帳から引き落としにしておいた。大学卒業まで
バイトをすれば小遣いにも困らないだろう。藤井家からもらった手切
金は、ちゃんと学費に回すんだぞ」
 わざと口うるさいことを言いながら、文弥の肩を叩く。

「ひとりでも頑張れるな?」
 切り捨てるように問われて、文弥はやるせなかった。社交辞令で
いいから「たまには遊びに来い」と言って欲しと思う。

 しかし、瀬川は実に理性的で頭の良い男だった。文弥を引き取って
藤井家との友好関係を壊すのは得策ではないし、セックスは物わかり
が良く、大きくて柔らかい胸を持つ女とするものだと考えていた。それ故、
彼にすれば文弥は厄介者以外の何者でもなかった。

 透明な瞳で自分を見つめているだけの文弥に、まるで子猫を捨てる
ような良心の呵責を感じて、瀬川は「大丈夫だな?」と念を押した。

「はい……」
 蚊の鳴くような小さな声だったが文弥が肯いて見せたので、瀬川は
満足し、「元気で」という一言を残して部屋を出た。

文弥には、大学に通い年相応の青春を謳歌して欲しいと思う。自分の
ような世俗にまみれた薄汚い生き方は似合わない。平凡で穏やかな
人生こそ文弥に相応しい。そのためにも、二度と会わない方がいいのだ。

前へ   目次   次へ

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ランキングに参加してますので、ポチしてもらえると励みになります(*^_^*)
            


テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

誰も泣かない―4

 取り残された夕暮れの中、文弥は真新しいベッドに腰掛けた。
愛人だった過去を引きずりたくなくて、ベッドだけは新しいものを
と瀬川に頼んだのだ。文弥は、パトロンを失った心細さより、
瀬川に会えなくなるという哀しみに打ちのめされていた。

 外では雨が降り出したらしい。しのつく雨音を聞きながら、文弥
はひとり、恋しい男の事を想った。

 美しいものに目のない藤井組長が側に置くだけあって、瀬川は
本当に美丈夫だった。文弥が組長から寝物語に聞いた話によると、
瀬川が大学一回生の時、父親の会社が倒産して、父親は自殺、
母親は心労で入院した。瀬川は母親の入院費や学費を稼ぐため、
自分から組長に身体を売った。その関係は、瀬川が司法試験に
合格した二十三歳まで続いたという。

 そして瀬川は、組の顧問弁護士を務めるのを条件に、キッパリ
愛人関係を終わらせたのだった。周囲の者がそれを黙って受け
入れたのは、瀬川の毅然とした態度と他人に媚びない凛とした
美貌のためだ。以来、二人の関係は『共犯者』という名の友交関係
に変わった。

 その話を聞いて以来、文弥は自分と同じ境遇に身を置きながら、
自らの力で這い上がった瀬川に強い憧れを抱くようになった。

 組長は、瀬川を信頼していたので、文弥を囲っていたマンションにも
自由に出入りさせていた。瀬川の方は、組長の独占欲の強さを知って
いるだけに、文弥と用心深く距離を置いていた。会話はいつも必要
最低限。挨拶と用件だけを伝える短いものだ。それでも文弥は幸せ
だった。ただ、見ているだけで……。

 育ちの良さを感じさせる優雅な雰囲気と均整の取れた長身、ゆったり
とした甘いバリトンは、聞く者をうっとりとさせた。クールな美貌は、
いつもポーカーフェイスで何を考えているのか決して相手に悟らせない。
それでも何かの拍子にぽろりと見せる優しさに、文弥は縋る思いで恋をした。

前へ   目次   次へ

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ランキングに参加してますので、ポチしてもらえると励みになります(*^_^*)
            


テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

誰も泣かない―5

 いつの間にかウトウト眠ってしまったらしい。文弥が携帯電話
の鳴る音に目を覚ますと、あたりは真っ暗だった。手探りで明か
りのスイッチを入れ、慌てて携帯を取る。液晶画面に表示されて
いたのは同じゼミに所属する三上早紀の名前だった。

 早紀は物怖じしない明るい性格で、文弥にとって友人と呼べる
たった一人の相手だった。文弥がやくざの愛人だとバレたとき、
友達だと思っていた者達が皆、蜘蛛の子を散らすように逃げて
いったが、早紀だけは違った。自分を気にかけてくれる存在が
いる……それは文弥にとって大きな心の支えだった。

 藤井組長が死んで以来、一度も大学に行っていなかったから、
心配してかけてくれたらしい。大学の近くに引っ越したことを報告
すると、早紀は電話を切って三十分ほどでやって来た。

「もう、自由の身だね」
 文弥の顔を見るなりそう言って笑った。文弥もつられて微笑んだ。

 すでに夜の九時を回っていたが、早紀が渋る店主を拝み倒して
蕎麦の出前をしてもらい、ふたりで引越祝いをした。それから他愛
のない教授の噂話や研究課題の材料集めなどを話し込み、瞬く間
に深夜になってしまった。

「今夜……泊まっても…いい?」
「いいよ。まだ来客用の布団がないから、僕のベッドを使って」

 無邪気に応えた文弥が、「泊まる」という言葉の真意に気づいて
いないと悟って、早紀は盛大な溜息を零した。

「エッチしよってことだよ。友達から恋人に格上げして欲しいの」
 文弥は絶句して固まった。早紀は友達で、それ以上でもそれ以下
でもない。セックスの対象として考えたことなど、ただの一度もなかった。

「恋人……?」
 文弥は唖然として早紀を見つめた。

早紀の一重だが大きくて澄んだ瞳が、驚くほど真剣に見つめ返して
くる。笑うとえくぼのできるふくよかな頬は、緊張のためかいくぶん
引きつっている。

「小川くんはもう自由の身になったから、恋人を作ったって問題ない
でしょう? 四回生の先輩とかゼミの女子とか、みんなが小川くんを
狙ってるから、出遅れないうちに立候補したいの。あたしのこと、嫌い?」

 早紀は、狡い訊き方だと思いながらも文弥に抱きついた。

前へ   目次   次へ

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ランキングに参加してますので、ポチしてもらえると励みになります(*^_^*)
            

テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

ブランシェ

Author:ブランシェ
まったり更新中です。

最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

フリーエリア
リンク
QRコード
QRコード
最新コメント
月別アーカイブ
 
無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。