嫉妬―2

 あの美しい人に、大河内を取られたくない。まるで宝石のような輝きを
放つ彼に、大河内が惹かれているのはよくわかっている。それでも、
自分だけを見ていて欲しい。自分だけを愛して欲しい。

 切なさに涙が零れた。堪えきれずに漏らしてしまった嗚咽に、大河内は
少し驚いたようだ。しばらく逡巡した後、口を開いた。

「何を不安がっているんだ? オズモンド氏のことか? それとも彼の恋人
のことか?」

「戸惑っているんです。僕なんかに、あの綺麗な人を描ききることができ
るのかどうか……。すべてを取り込まれてしまいそうで怖い」

 大河内を奪われそうで怖いなどとは口にできなかった。そんな権利など
自分にはないと心得ている。それより、あれほど強烈な光を放ちながら、
捕らえどころのない彼を、どう描けばいいのかわからず、優は途方に暮れ
ていた。そして、自分に向けられた冷ややかな敵意も感じていた。

「オズモンド氏は、おまえの才能を高く評価してくれている。だからこそ、
あの気難しい恋人をおまえに描かせる気になったんだ」
「気難しい?」
「俺はあんなに屈折した人間は、そうそういないと思うがな」

 苦虫を噛みつぶしたような表情で大河内は言った。
「まあ、米国で一二を争う大富豪のパトロンを得るためだ。ご機嫌を取る
甲斐はあるさ」

 ペロリと優の涙を舐め取ると、優しく頭を撫でてくれる。優は、ようや
く大河内が自分のために、あの美しい人のご機嫌を取ってくれていたのだ
と気づいた。

 嫉妬で、大河内の配慮に気づかなかった自分は、なんてバカなのだろう。
こんなにも愛されているのに、大河内を信じ切れなかったなんて。
 優は、おずおずと大河内の首に腕を巻き付けると、その唇にキスをした。

「今夜は、やけに積極的だな」
 大河内が極上の微笑みを浮かべた。
「ご期待に応えて朝まで寝かせないから、覚悟しろよ」

「ええ、恭介の望むままに」
 再び零れた涙は、もう悲しみの涙ではなく――

                END     


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