恋人は浮気する・10

 廊下の自販機でコーヒーを飲んでいると、滝本が
つかつかと歩み寄ってきた。

「白藤先輩! なんで山田さんにウインクなんかするんですか!?」

「美香が持ってきた嫌な仕事を俺の替わりに引き受けてくれたから」

 俺の答えに、滝本は拍子抜けしたように肩を落とした。

「それだけですか?」
「うん、それだけ」

 滝本、おまえ、鈍すぎるぞ。ベッドで俺が浮気したことに
気づかなかったくせに、お愛想でしたウインクに目くじら
立てるなんて、馬鹿もいいところだ。

俺がシラケた目で滝本を眺めていると、滝本はバツが悪そうに赤くなった。

「今夜、うちに来ませんか? 見せたいものがあるんです」

 滝本が、小声で俺の顔色を窺うように言った。

「ダメだ。週末にしろ」

 俺はピシャリと言ってやった。大体、滝本が見せたいものなんて、
ロクなもんじゃないはずだ。

こいつの感性は、俺と天と地ほどかけ離れているんだから! 
俺は白いエプロンと看護師の制服を思い出して、また腹が立ってきた。

「それが週末は、女の子達が遊びに来ることになっちゃって……」

 言いずらそうに目を伏せた滝本は、叱られた子供のように
痛々しかった。俺に怒られると思ってるんだ。

「好きにすればいい。休みくらい俺の顔を見ないでいたいよな」

 ねちねち嫌味を込めて言うと、滝本は心底、困惑した顔をした。
滝本を苛めちゃいけないと頭では分かっているが、さっきの
女の子達に囲まれた滝本の姿が目の前にチラついて、俺はその怒り
をぶつけずにはいられなかったんだ。

「やっぱり、怒ってるんですね」
「誰のせいだよ」
「ごめんなさい」

 不毛で気まずい会話が交わされ、俺は地団駄踏みたいほど
苛立った。こんなつもりじゃないのに、こんな風に滝本を
傷つけたい訳じゃないのに、どうして素直に「永良沙織と
つき合ってるのか?」て訊けないんだろう? 

 その時、山田が俺を呼びに来た。
「白藤さん、K鉱業の元木さんからお電話です」

「あ、すまん。今、行く!」

 俺は飲みかけのコーヒーカップをゴミ箱に放り込むと、
オフィスへと走った。

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