ライオン・39

「くそっ、忌々しい女だ。よりによって初日に来るなんて」

「誰がチケットを送ったんでしょう? まさか……大聖さんじゃないですよね?」
 笙が不安そうに呟いた。

「いや、あいつもそこまでバカじゃないさ。自分が捨てられたことぐらいわかってる。
だが、あいつならやりかねない気も……」
 坂本は眉間を押さえて考え込んでしまった。

「大聖さんに知らせた方がいいでしょうか? ステージが始まってから気づくより
動揺は少ないと思うんですけど……」
「そうだな、そうしよう」

 大聖は、楽屋でアルバムにサインを入れていた。開演前の緊張を紛らわせるには、
こういった単純作業がぴったりだ。そこへ坂本がノックもなく乱暴にドアを開けて
入ってきた。

「大聖、招待席に木村春菜が来てる。おまえがチケットを送ったのか?」

 非難めいた口調に、大聖は手を止めて坂本を見た。それぞれ思い思いのことをして
いたメンバーも何事かと視線を向ける。

「まさか! 俺は送ってねーよ」

「じゃあ、いったい誰が……」

「オレが送ったんだ」

 二人の会話を聞いていた泉川が、悪びれた様子もなくさらりと言ってのけた。

「逃した魚は大きかったってことを見せつけてやれば、彼女も考え直して大聖の
ところに戻ってくるかもな」

 泉川が悪戯っぽくウインクすると、大聖は目を輝かせて立ち上がった。

「そっか! 春菜はまだ結婚した訳じゃない。気が変わって俺とやり直す気になるかも!」

 つくづく単純でおめでたい男である。その場にいた全員が呆れ果てたように大聖を見たが、
本人はいたって真剣に信じていた。泉川の、大聖を鼓舞する作戦は成功と言える。

 だが、泉川にチケットを送られた春菜は、どういうつもりでこの会場まで足を運んだの
だろう。坂本と笙は、顔を見合わせた。

 その時、大聖の事務所社長であり、笙の伯父でもある小早川靖彦が楽屋に現れた。

「あと5分で開演ベルを鳴らすそうだ。みんな舞台へ移動してくれ」

 その言葉で、一同に緊張が走る。

「なんだ、笙くんはまだここにいたのか。せっかく招待席を用意してもらったのに、
こっちで観るのか?」

 目敏く笙を見つけた小早川に言われて、笙は気が進まなかったが慌てて楽屋を出た。

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