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ライオン・83

 帰国した笙は、髪を明るめのアッシュブラウンに染め、根元にパーマをかけて、
ふんわりとした中性的なスタイルにしていた。坂本が、レコーディングの合間を
縫って、現地のカリスマ美容師のところに連れて行ったのだ。

「うわぁ、すげぇイメチェン。別人みたいだ~!」

 新しい付き人の澤田と一緒に、空港まで出迎えに来た大聖は、笙を見て開口一番、
そう叫んだ。陰気に見えがちだった黒髪を明るくしたことで、笙の地味な印象が消え、
柔らかな雰囲気を醸し出している。

「笙くんの中身は変わってないから安心しろ」
 大聖の感嘆を余所に、坂本がつまらなさそうに言った。

「凄く有名なスタイリストだって聞いたから、お任せしたらこうなったんだ。
大聖さんが嫌いなら、黒髪に戻すよ?」

 笙がオドオドと言ったので、大聖はなるほど中身(性格)は変わっていないと納得した。

「逆、逆! 怖いくらい似合ってる!」

 大聖が笑って笙の肩を抱き寄せると、周囲を取り巻いていた人集りから女性達の
キャーという黄色い声が上がった。

「立ち話はまずい。早く駐車場へ移動しよう」
 坂本が促すと、付き人の澤田が気を利かせて笙の荷物を持ってくれた。

「高柳くん、ホント、似合ってますよ!」
 澤田からも興奮気味に褒められて、笙はほっとしたように微笑んだ。



 帰国してゆっくり休む間もなく、笙は大聖と共に、プロモーション・ビデオやジャケット
撮影、雑誌の取材に追われた。4月からは笙の大学生活がスタートし、大聖も映画の撮影が
あって慌ただしい毎日だった。

 『spica』のファースト・アルバムは特に同業者達から熱狂的な支持を受け、海外からも
注目を浴びた。笙の学業が優先ということで、ライブは夏に東京・大阪・福岡の3カ所で
計7公演しか行われなかったが、返ってそれがファンの稀少感を煽ったようで、どの会場も
満員御礼の即日ソールド・アウトだった。

 笙はこれまで大聖の忙しさを端で見ていただけだったが、いざ自分がその渦中に
投げ込まれると、しみじみ大聖の凄さがわかった。笙には、大聖のように常に体調を
ベストに保ち、24時間パワフルに動き回ることなどできない。笙の体力では一日
8時間の労働が限界だ。

 それでも、笙は月に一度、大切な儀式のように、大聖とセックスをするのは欠かさなかった。
大聖が疲れているからと面倒がると、笙はこの世の終わりのような顔で大泣きした。
そのため、大聖は笙の機嫌を取るのに苦心し、以来、大聖は笙の誘いを決して断らないことにした。

 行為の後、笙は足腰が立たなくなるので、いつも大聖が笙の身体をタオルで清めてくれる。
笙としてはセックス以上に恥ずかしくて堪らないのだが、大聖はバカ話でうまく笙の気を
紛らわせてくれた。

「大聖さんは、身体を拭いたりするの上手だね」
 パジャマを着せられ、シーツを交換するためソファーに移された笙は、感謝の眼差しで
大聖に言った。

「親父が入院してた時に、覚えたんだ。あの頃は、今みたいに売れてなかったから
時間もあったし」
「そうなんだ。お父さん、どんな人だったの?」
 笙は、チェストの上に置かれた仏壇に視線を移した。

「普通のサラリーマンだったよ。部品メーカーの営業マン。俺の顔はお袋似だけど、
性格は親父に似たと思う」
 大聖は、シーツを取り替える手を休めることなく話し続けた。

「親父は離婚してから同棲してた恋人がいたけど、病気になって逃げられてさ、
10年も会ってなかった俺んとこに連絡がきて、俺が世話することになったんだ。
いろいろあったけど、親孝行できて良かったと思ってる」

 勝手に入院先の病院を抜け出して大聖の舞台を観に来たり、パチンコに出かけたりと、
かなり破天荒な人だったと、笙は葬儀の後、カフェ『ミルク・クラウン』の
岡村さゆりから聞いた。

 しかし、父親のことを話す大聖は、屈託なく楽しそうだ。なにかと迷惑をかけられ
ても、大聖は父親が好きだったのだ。

 反対に、大聖は母親のことを決して話さない。笙の伯母・由美が、大聖を養子に
望んだ時、大聖の母親と一悶着あったのは、笙も知っていた。由美が岐阜の実家で
泣いているのを笙も見ていたからだ。だから、大聖の母親の話題はタブーだった。

 その時突然、インターホンが鳴った。時刻は深夜11時を過ぎている。

「こんな時間に誰だろ? 坂モッチャンかな?」
 足早にインターホンのモニタを見に行った大聖は、驚いて息を飲んだ。

「春菜……!?」

 その呟きに、ソファーのクッションに身を預けていた笙も驚いて起き上がる。
インターンホン越しに春菜の震える声が聞こえた。

「お願い、大聖……助けて……」

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