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誰も泣かない―34【完結】

 二人は寝室こそ一緒だが、勉強に集中できるようにと、瀬川が
個室を与えてくれたお陰で、文弥はいつもそこに籠もりっぱなしだった。

キングサイズのベッドに文弥が潜り込むのは明け方近くで、瀬川は
文弥の細い身体を胸に抱きしめながら、朝までのわずかな時間を過ごす。

 むろん瀬川も男だから、それだけで我慢できるはずもなく、時折、
文弥の目を盗んで若いホステスを摘み食いしているのだが。文弥の
方も、瀬川の浮気に何となく勘づいても、恨み言を口にすることは
なかった。瀬川が遊びと本気の区別をきちんとつけて、決して朝まで
女と過ごさず、必ず自分のいるマンションに帰ってくるからだ。

「今日は、一日ベッドで過ごそう」
 甘く囁かれて、文弥は嬉しそうに小さく頷いた。

 文弥の身体はどんな女より具合がいい、と瀬川は思う。背後から
緩く突き上げながら前を弄ってやると、内壁はキユウキュウと瀬川の
分身を締め上げてくる。目の前に広がる大輪の牡丹は、しっとりと
汗ばんで芳しい艶を放っている。

「うっ……ああっ、も…イクぅ……!」
 若い牡がビクビクと震えて精を迸らせると、内部が激しく収縮し痙攣する。
瀬川も堪らず、引き摺られるように達した。

 呼吸を整えながら、瀬川が優しく文弥の髪を撫でてやっていると、
文弥がポツリと呟いた。
「昨日、清水琴音さんという女性にお会いしました」
「……どこで会ったんだ?」

 瀬川は内心の動揺を押し隠して訊いた。琴音とは、彼女が夫の転勤に
付いていって以来、一度も会ってはいないが、今さら何のよう用だったの
かと考える。まさか文弥に嫌がらせをするとも思えないが……。

「ここに訪ねてみえたんです。小さな男の子と一緒でした」
 一瞬、瀬川の心臓がドキリと跳ねた。

「それで?」
「『久しぶりに顔を見に来たけれど、留守ならいい。来たことも伝えなくて
いい』とおっしゃって、すぐにお帰りになりました」

「そうか……」
 瀬川は安心すると同時に、酷く不安になった。琴音が小さな子供を連れて
いたというのが、ひっかかる。その不安を察したかのように文弥が言った。

「男の子は、あなたに……よく似ていました。琴音さんは、あなたに子供を
見せたかったのだと思います」

「ああ、俺の子供かもしれないな。彼女は絶対に認めないだろうが」
 諦めたように告白した瀬川に、文弥は表情を曇らせた。

「文弥、俺は愚かでどうしようもない男だが、おまえさえ傍らにいてくれれば
生きていける。何があっても俺と別れようなんて考えるなよ。俺はおまえと
だけは絶対に……絶対に別れたりしないからな!」

 珍しく激昂した瀬川の様子に、文弥は瀬川が琴音に捨てられたのだと
悟った。そしてそのことで、瀬川が酷く傷ついたことも……。

「愛しています。僕にはあなただけです」
 文弥は慰めるように瀬川に寄り添った。救いを求めるように瀬川の腕が
文弥をかき抱く。

「愛情だけで、おまえを繋ぎとめておけたら、どんなにいいだろうな」
「僕にはそれで充分です。充分過ぎるほどです」

 瀬川は心底、嬉しそうに笑った。その少年のような笑顔に、文弥は
思わず見惚れた。その笑顔が自分だけに向けられるものだという喜びに、
深い感動を覚える。

 この笑顔が自分に向けられる限り、文弥は瀬川の側を離れまいと思う。
誰にも愛されないと泣いていた自分を拾い上げ、愛してくれた男の、この
笑顔を守れるようになりたいと、そのために生きようと思う。

 しかし、それを口にする前に、文弥は瀬川の猛ったものに貫かれ、
快楽の海に投げ込まれた。せめて身体で心を伝えたいと、懸命に脚を開く。

「もっと…奥まで……ください。……あなたと……ひとつになれるように」

 文弥の訴えに、わかったというように律動が激しくなる。いつになく感じ
過ぎて、文弥は身体が宙に浮いているような錯覚に襲われた。

「ひっ…あ、アアッ――!!」
 放埒に声を上げながら、文弥は再び上り詰めた。タイミングを合わせる
ように瀬川も弾け、身体の奥深くに熱い迸りが叩きつけられる。

「愛してる」
 瀬川に囁かれ、文弥はうっとりと微笑んだ。

今夜は寝かせてもらえないかもしれない。しかし、それで瀬川に想いを
伝えられるなら、それも悪くない。

文弥は、甘える子猫のように瀬川の胸に頬をすり寄せた。

                       終

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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

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このお話、すごくすごく好きでした。
改めて読み返しましたが、今でも読みながら切なさに胸がきゅ~と痛くなって、毎日続きの更新を楽しみにしていたのを思い出します。

さんそさんへ

作者冥利に尽きるお言葉、ありがとうございます。
消耗品ではない、繰り返し読んでもらえる上質な作品を
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