君と創る明日――9

 須賀の送別会をした翌朝、英夏が目を覚ましたのは須賀の
アパートだった。窓越しに蝉の鳴き声が聞こえる。

「須賀さん、どこ?」

 須賀の返事はなく、英夏は心細さにタオルケットを引き寄
せた。英夏にベッドを譲って、リビングのソファーで休んだ
はずの須賀はどこへ消えたのか……。

 やはり、酔ったふりをして抱いて欲しいと頼んだのがマズ
かったのだ。おそらく須賀は、英夏を持て余して、友達のと
ころにでも泊まったのだろう。

 枕元の時計を見ると午前九時だった。無断外泊したことを、
成利が怒っているのは容易に想像できた。英夏は、成利
との関係を須賀に悟られたくなくて、ついに成利へ電話する
ことができないまま眠ってしまったのだ。

 英夏が惨めな気持ちで寝返りを打った時、アパートの玄
関ドアが開いて須賀が顔を出した。

「おはよう、コンビニで朝食を仕入れてきたから一緒に食べよう」

 コンビニのビニール袋を掲げて微笑む須賀を、英夏は呆
けたように見つめてしまった。須賀は、逃げ出してはいなかったのだ。

「ひとりで心細かったのかい? すぐ戻るつもりだったから置
き手紙もしなくてごめんよ。頼むから泣かないでくれ」

 困惑した須賀の声に、英夏は自分が泣いていることに初めて気づいた。

「だって、嫌われたかと……」

 須賀は、英夏の涙を指先で拭うと、真剣な表情で囁いた。
「酔った勢いで君を抱いたりしたくなかったんだ。だから言ったろう? 
酔いが醒めても君の気持ちが変わらなかったら……しよう…って」

 英夏は嬉しくて夢中で須賀にしがみついた。

「もう、酔ってなんかいない。だから抱いて……いっぱい抱いて!」




 成利は、パニックになりそうな自分の心を必死で押さえつ
けて、まんじりともせず夜を明かした。英夏の携帯は切られ
たままで、成利が何度コールしてもメールしても返事はなか
った。

とはいえ、あちこちに英夏の安否を尋ね回れば、英夏
の無断外泊が英夏の両親の耳に届いてしまう。

 成利は、朝食も昼食も摂らず、ひたすら英夏からの連絡を
待った。ようやく英夏から成利の携帯メールがあったのは、
その日の夕方になってからだった。

『これから、須賀さんに送ってもらって帰る』

 英夏が直接、電話を掛けてこないのは、成利の小言を疎
んじてのことだろう。一晩一睡もしていなかった疲れがどっと
押し寄せてきて、成利は崩れるようにソファーに身を横たえた。

 何はともあれ、英夏は帰ってくるのだ。二人で暮らすこの
部屋へ。英夏が須賀と寝ようが、誰と寝ようが、そんなことは
構わない。最後に帰る場所が自分の胸なら……。

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ありがとうございます!

鋭いご指摘、ありがとうございます。
今、読み返してみて納得しました。
それで、ちょこっと直してみました。
週末に、月桜とも相談してみますね。
   管理人 みかりより
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