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ライオン・36

 早速、久住を交えて、通しでライブ・セッションをすることになった。
笙は、引き継ぎのため、久住に進行表を見せながらいくつかの注意点を説明する。

 相変わらず、一部の隙もなく完璧に楽譜を演奏する久住のテクニックは、
素晴らしかった。笙がどんなに努力しても真似することのできない才能だ。

「後でゆっくり話せないかな?」
「………」

 笑顔で久住に話しかけられ、笙は惑乱した。まだ、大聖以外の誰も二人が
旧知の中だとは気づいていない。

「笙が突然、行く先も告げずに転校してしまって、ずっと探していたんだ」

「ごめんなさい、先輩」
 笙は唇を噛みしめて俯いた。

「謝らなくていいんだよ。君は何も悪くない」

 優しい口調で囁かれ、笙の心は揺れる。

「もちろん、僕の気持ちは変わってない。笙だって、僕を愛してるだろう? 
大丈夫、僕達はやり直せる」

 自信たっぷりに宣言され、笙は観念したように肯いた。



 もともと、今日の久住の参加に合わせて歓迎会が予定されていた。
しかし、笙は頭痛を訴えて先に帰宅することになった。さすがに大聖は一緒に
帰宅するわけに行かず、坂本に付き添われて帰宅する笙を苦い思いで見送った。

 歓迎会は、スタジオ近くのダイニング・バーを借り切って、メンバーとスタッフ、
総勢30名あまりの参加者で行われた。美咲も顔を出し、賑やかにノロケ話を披露した。

 美咲が熊沢に伴われて帰宅したのを機に、泉川と主要メンバー6名で二次会の
カラオケへと移動する。笙を小早川家へ送り届けた坂本も合流した。


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ジャンル : 小説・文学

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タイトル

『ライオン』というタイトルは、大聖がイントロで語った
ヴェネチア映画祭の金獅子賞に由来しています。

実はもう一つタイトルに候補があったのですが、
こちらは笙の視点に絞られてしまうし、
ネタバレの可能性も出てくるため
迷った末、『ライオン』にしました。

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