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ライオン・75

笙にとって受験勉強の息抜きは、夕食の後、たまに大聖と二人、リビングで
雑談をすることだ。大聖は、ライブツアーのリハーサルとダンス・レッスンで
相変わらず忙しいが、以前よりはいくらかマシになって、夕食はだいたい
小早川家で笙と一緒に食べていた。

 夕食の後、笙がひとり、小早川家のリビングでまったりしていると、大聖が
紅茶のマグカップを二つ運んできた。家事にまったく興味を示さない笙と違い、
大聖は由美にきっちり躾けられていた。料理も洗濯も掃除も、仕事で忙しいとき
以外は、自分のことは自分できちんとこなしている。

「笙、ほら紅茶、ここ置くぞ」
「ありがとう」

 ふと、マグカップを置く大聖の腕を見た笙が、目敏く言った。
「ねえ、神崎先生にもらった時計、どうしたの?」

 笙に指摘されて、大聖は自分が誕生日に神崎美耶子からプレゼントされた時計
を嵌めていないことに気づいた。

「あっ、ほんとだ。どこに置き忘れたんだろう……参ったな」
「防水だから、お風呂以外じゃ外さないって言ってたよね」

 憧れの脚本家・神崎美耶子からもらった時計なので、大聖はまさに肌身離さず
身につけていた。それを無くして動揺した大聖は、大きなミスを犯してしまった。

「そうだ! ゆうべ、シャワー浴びたときに外した!」
 手早く携帯を操作して、坂本を呼び出す。

「坂モッチャン、俺、坂モッチャンとこに時計を忘れてきてないかな。ほら、
神崎先生にもらったヤツ」
「あ、やっぱり!  え? メールくれた? わりぃ、気がつかなかった」

 その時、突然、大聖は笙に腕を引っ張られた。
「大聖さん、坂本さんの部屋でシャワー浴びたの?」

 詰問されて、大聖は初めてそれが何を意味するか気づいたが、後の祭りだ。

「あ…あ、そうなんだ。服に酒こぼしちゃってさ、着替えついでに坂モッ
チャンとこでシャワー借りたんだ」

 大聖の引き攣った顔と苦しい言い訳に、笙は今にも泣き出しそうな顔をする。
大聖が、ゲイの坂本の部屋でシャワーを使う、その理由がわからないほど
、笙だって初心ではない。

「だから変な誤解、するなよ?」

 伸ばした手は、力一杯、振り払われた。



「わかってると思うが、絶対に認めるな。どんなに問い質されても、違うって
言い張るんだ」
 大聖から事の次第を聞いた坂本は、苦虫を噛みつぶしたような表情で
大聖に命令した。

「浮気は認めた瞬間から成立する。だから、絶対に知らぬ存ぜぬで通すんだ。
むろん、俺もそうする」
「うん、わかった」

 神妙な面持ちで肯いた大聖だが、実のところ自信はなかった。笙に、まっすぐ
見据えられて問われたら、きっと土下座してしまうだろう。
 とはいえ、坂本が言うところの“誤解”を解かないことには、仕事に差し障って
しまう。自分で蒔いた種とはいえ泣きたかった。


 大聖が小早川家を訪れると、例によって笙は部屋に閉じ籠もっていた。
「ダイちゃん、また笙くんと喧嘩したの?」
 笙の伯母・由美は、笙の籠城にはもう慣れっこで、事態の深刻さには気づいていない。

「うん、ちょっとね。俺、謝ってくるから心配しないで」
「そう? ありがとう」

 しかし、笙の部屋はドアを開けられないよう内側に家具が置かれ、大聖は1時間
あまりドアの前で粘ったが、口も利いてもらえなかった。

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