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ライオン・82

年明け2日に、大聖は笙の実家へ出かけた。笙と音楽ユニット『spica』を
組むことになったので、その挨拶のためだ。笙の祖母・高柳世津は、大聖を大歓迎
してくれた。

 年末から、小早川夫妻と共に里帰りしていた笙は、大聖の挨拶が終わるやいなや、
大聖と一緒に帰京してしまった。母親が大聖に、笙の学業を優先して欲しいと訴えた
のが癇に障ったからだ。笙は母を大切に思っているが、溝は深まるばかりだった。

「なんか、結婚の挨拶に行くみたいで、スゲー緊張した」
 新幹線の個室に落ち着いた大聖は、未だ興奮冷めやらないといった様子だ。

「笙は我関せずってカンジで、平然としてたよな。『俺達』のことなのに」
 大聖が文句を垂れると、笙はバツの悪そうな顔をした。

「ごめんなさい」
「よし! じゃ、許してやるからチューしろよ」

 大聖が尊大に言うと、笙は真っ赤になり、チラリと個室のドアが閉まっていることを
確認した。それから大聖の唇に触れるだけのキスをして、再びドアが閉まったまま
なのを確認する。

「本当に笙は、小心者だよなぁ」
 大聖は呆れたように言うと、面白そうに笑った。


笙は、『spica』のファースト・アルバム『Tommorow Memores』のレコーディング
を済ませ、3月1日の卒業式を待って、翌2日からロサンゼルスに飛んだ。
ピース・レーベルからの強い要望で、凛々花のレコーディングに立ち会うことに
なったのだ。

 笙は英語が苦手だった。耳が良いので聴取りは申し分ないが、無口なのが災いして
発音が苦手なのだ。そのため、アメリカ育ちで英語に堪能な坂本が同行した。大聖には
坂本の代わりに、柔道部出身だという澤田伸一郎がボディーガードを兼ねて付き人になった。

 声域の狭い大聖と違って、凛々花は大聖の倍以上、つまり3オクターブ半の声域を
持っている。その上、抜群の音楽的センスと表現力に恵まれていた。笙にとって、
この1歳年下の少女との出会いは、まさに運命だった。

 凛々花は歌っているときは大胆なのに、それ以外の時は大人しい少女だった。
人種を感じさせない、だがあらゆる人種のいいとこ取りをしたような神秘的な美貌と
スタイルで、いつも感情のない目で人を見た。

 彼女は、日本語がほとんどわからないし、笙も英語は片言しか話せなかったが、
音楽は万国共通語とはよく言ったもので、コミュニケーションには困らなかった。
ダイアモンドが同じ硬さのダイアモンドでしか磨けないように、二人は互いに競い合い、
時に共鳴し、たった二週間のレコーディングで猛烈な進化と成長を遂げた。

 それは、相手のことが手に取るようにわかる、もう一人の自分に出会ったような
不思議な感覚だった。もし笙が、まだ大聖と出会っていなかったら、恋と勘違い
していたかもしれない。

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