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ライオン・95

 ロスに戻るとビッグニュースが待っていた。凛々花がアメリカで
最も有名な音楽賞を受賞したのだ。受賞曲は笙が作曲、凛々花が
作詞した『Mon seul tresor(たった一つの宝物)』だった。
お陰で、笙もアメリカのみならず全世界で一躍脚光を浴びることになった。

 笙は、連日の取材やパーティーで、『英語の嵐』の中に投げ込まれた。
これで英語が話せるようにならないはずがない。いつの間にか、あれほど
話すことが苦手だった英会話ができるようになっていた。

 笙と凛々花が婚約するのではないかと噂が広まる中、5月10日に
凛々花の誕生パーティーが開かれた。

 笙が「凛々花とは親友だが恋人ではない」と懸命に説明しても、
記者達は一向に信じてくれない。凛々花には好きな男がいるのだが、
それは笙と凛々花だけの秘密で話すことはできない。笙には凛々花の
ように上手く記者達をあしらうことができなくて、這々の体で
バルコニーへ逃げ出した。

「一段と綺麗になったね。見違えたよ」

 夜風に当たっていると懐かしい日本語で話しかけられ、笙は声の主・
久住啓介をゆっくりと振り返った。日系アメリカ人である凛々花の
誕生日パーティーには、日本の著名人も数多く招かれていた。
これは、凛々花の悪戯だろう。

「お久しぶりです、先輩」

 不思議と動揺はなかった。久住は留学先のドイツに拠点を置いて、
精力的にコンサート活動をしており、ボストンやNYでのコンサートでは、
笙にチケットを送ってくれた。むろん、笙がそれに足を運ぶことはなかったが。

「天野さんと別れたって聞いたけど、本当なのか?」

 単刀直入に質問されても、笙は動揺しなかった。我ながら神経が
図太くなったものだと思う。

「僕の大聖さんへの気持ちは変わっていませんから」
 笙が静かに答えると、久住は優しく微笑んだ。

「だろうと思ったよ。それでも、やっぱり俺の気持ちも変わらない。
お互い様だから許してくれるよな?」

「そんな風に僕を甘やかさないでください。僕はまた甘ったれた子どもに
戻ってしまう。やっと、『あのこと』も大聖さんと出会うために必要な
通過点だったと思えるようになったのに」

 笙はそう言って穏やかな眼差しで久住を見つめ返した。

「あの幼くて可愛らしい笙は、もういないんだね」

 久住は哀しそうな声で呟くと、頭上に広がる夜空を見上げた。

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