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ライオン・104

 笙の最奥で欲望を解き放った大聖は、ようやく理性を取り戻し、
怯えたように身を引いた。激しいセックスに精根尽き果てて身動きできないで
いる笙から、目を反らしたくて起き上がって背を向ける。

「ごめんな……」
「どうして謝るの?」

 笙はしどけなく横たわったまま、力なく訊いた。

「……別れたのに抱いたから」

 低く抑揚のない声でそう言われ、笙は大聖が自分を抱いたことを後悔して
いると悟った。悔しくて思わず半身を起こして叫ぶ。
「謝らないでよ!」

「やっぱり怒ってるじゃないか」
 大聖は笙を振り返ると困惑して呟いた。笙はもう苛立ちを隠し切れなかった。
「大聖さんが謝るからだよっ」

 言った途端、笙は堪らなく惨めになった。大聖の前では絶対に泣きたくなかったのに、
涙で目の前が霞んでくる。泣き顔を見られまいと慌てて大聖から顔を背けた。

 大聖は、そんな笙を見て、愛しさにどうしようもなく胸がときめいた。咄嗟に
笙を抱き寄せてしまう。そして、覚悟を決めて白状した。

「愛してないのに抱いたりなんかしない。でも、優しくできなくてごめんな。
身体、きついだろ?」

 大聖が耳元で囁くと、笙は驚いて惚けたように大聖を見た。大聖は笙の瞳を
覗き込むようにして告げた。

「笙……俺はいずれ、おまえを残して先に死ぬよ。だって俺の方が10コも年上
なんだから、しょーがねーじゃん。俺、おまえを泣かせてばっかりだけど、それでも
やっぱり一緒に生きていきたい。1分一秒でも長く一緒にいられるよう頑張るからさ、
最期まで俺の傍にいてくれるか?」

 歓喜のあまり、笙は大聖に抱きついた。天にも昇るような至福がゆっくりと
全身に満ちてくる。
 こんな風に幸せな時間をたくさん積み重ねて行けば、それを糧にどんな辛いこと
だって耐えられる。耐えてみせる。例え、再発への果てしない不安と恐れの中で生きて
いくことになっても、笙は「幸せだ」と胸を張って言える。

「うん、離れないよ。今度は大聖さんに頼まれたって、誰に何を言われたって、
もう絶対に別れない!」

 まるで誓いのキスをするように、笙は大聖に唇を重ねた。


 10月の定期外来に、大聖は笙を連れて行ってくれた。診察の順番を待つ間、
入院病棟でお世話になったという看護師長さんや看護師さんにも紹介してもらう。

「まあぁ、ダイちゃん、可愛い子を連れてるじゃない」
 中年の看護師にからかわれて、大聖ではなく笙の方が赤くなってしまった。

「俺が主演した映画がもうすぐ公開されるんだ。これ、試写会のチケット。
非番で来られそうな人に渡してよ」
「ありがとう。珠美ちゃんもきっと喜ぶわ」

 初めて聞く名前に、笙は説明を求めて大聖の顔を見た。

「女優になりたいって頑張ってた女子中学生だよ。半年前に亡くなった。俺に
よく懐いてくれてたんだ」

 淋しそうな大聖の声に、笙は絶句した。ここでは、死は身近で日常的なもの
なのだ。大聖は、死を目の当たりにし、死の恐怖と戦いながら生き抜いた。
改めて笙は、大聖と共に生きることの厳しさを実感した。

「大丈夫か?」

 病院から帰宅する途中、大聖が車の運転をしながら静かに訊いてきた。笙が、
死を間近に感じて怯えているのではないかと心配したのだ。笙は、ハンドルを
握る大聖の横顔を見ながら臆さず答えた。

「大丈夫。胸が痛いのは、僕が生きてる証拠だから」

「そうだな……そうだよな」
 大聖は、笙の言葉を噛みしめるように呟いた。

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