ライオン・105(完結)

 『花睡』の舞台挨拶や雑誌の取材など、慌ただしい日々が過ぎて落ち着くと、
大聖と笙は一緒に暮らし始めた。
 大学を卒業した笙は、日本のみならずアメリカやイギリスのシンガーにも
楽曲を提供し、海外と日本を行ったり来たりするグローバルな活動をしている。
しかし、大聖の定期外来だけは何があっても必ず同行した。

 今、大聖は、神崎美耶子・脚本のドラマ『おとぎ話の始まり』でヒロインの
相手役を演じている。ヒロインは、同じ事務所の望月結香だ。結香の我儘ぶりは
相変わらずだが、坂本のマネージメントが効を奏して、今では視聴率女王と
呼ばれるようになっていた。

 『花睡』がカンヌで脚本賞を受賞したという吉報があったのは深夜で、大聖と
笙はすでにベッドの中だった。

「次は、ベネチア国際映画祭の金獅子賞だ!」
 神崎美耶子からの電話を切った大聖が意気揚々と宣言した。

「どうして男優賞じゃなくて金獅子賞が欲しいの?」
 笙は、常々思っていた疑問を口にした。笙としては、『花睡』で渾身の演技を
見せた大聖に、男優賞を取って欲しいのだ。

「作品に与えられる最高賞だからだよ。監督も脚本も役者も、音楽も衣装も
裏方さんも、とにかく作品の全部が優れてるって評価される賞だからさ、
すっげぇお得感いっぱいじゃん」

「そっか、なるほどね」
 笙は、クスクスと笑ってしまった。あまりに大聖らしい理由だったからだ。

「なぁ、笙、知ってるか? 金獅子ってライオンのことなんだけどさ」
 大聖がふと思いついたように言った。
「交尾期に番のライオンは、食事もとらずに1日に20回から40回の交尾をするんだってさ」

 笙は嫌な予感がしながら訊いた。
「へーえ、凄いね。それ、誰に聞いたの?」
「坂モッチャン」

 やっぱり、と呆れながらも、笙は何とか話を反らそうと試みる。

「象徴学では、ライオンは太陽の回帰と――」

 笙は最後まで言えなかった。大聖に羽交い締めにされ、首筋をねっとりと
舐めあげられたのだ。

「俺さぁ、今、交尾期みたいだ……だから、何回できるか…試してみようぜ」

 情欲に掠れた声で囁かれ、笙はぞくり、と背筋に甘い震えが走った。広い胸に
抱きしめられ、その体温を感じる。それは、笙にとって人生を差し出す価値の
ある尊いものだった。

 象徴学に於いて、ライオンは太陽の回帰と、宇宙と生物のエネルギー再生、
そして生きる喜び、野心、自尊心、上昇を表す。笙は、快楽の波に身をゆだねながら、
大聖こそが自分にとってライオンそのものだと思った。    
 
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